あらすじ
本書は、フランスの経済学者トマ・ピケティが18世紀から現代までの約300年にわたる先進国の税務統計や所得・資産データを徹底的に分析し、資本主義社会における富の分配の歴史を解き明かした大著です。中心となる主張は「r>g」という不等式で、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るとき、富は資産家にますます集中し、格差が拡大していくというものです。ピケティは20世紀の二度の世界大戦が一時的に格差を縮小させたものの、現代では再び戦前の水準に戻りつつあると警鐘を鳴らし、解決策として国際的な累進資本課税の導入を提唱しています。
こんな人におすすめ
経済格差の問題に関心がある方や、現代社会のあり方を歴史的・構造的な視点から理解したい方に強くおすすめできる一冊です。経済学者や研究者はもちろん、政治家や政策立案に関わる方、ジャーナリストにとっても必読の書と言えるでしょう。また、ピケティの議論はバルザックやジェイン・オースティンといった文学作品にも言及しており、人文学的な教養を持つ読者にも読みやすい工夫がされています。投資や資産形成に興味のあるビジネスパーソン、貧困問題や社会正義に関心のある学生にも、世界の富の動きを知る上で大きな示唆を与えてくれる本です。
肯定的な意見
本書最大の功績は、膨大な歴史的データを丹念に収集・分析し、これまで印象論で語られがちだった経済格差の問題を実証的に明らかにした点にあります。300年にわたる長期データに基づく議論は説得力があり、「r>g」というシンプルな不等式で資本主義の本質的な矛盾を表現した手腕は見事です。また、経済学の専門書でありながら専門用語を抑え、文学作品や歴史的事例を豊富に用いて一般読者にも理解しやすい記述となっています。世界中でベストセラーとなり、格差問題を世界的議論の中心に押し上げた社会的影響力は計り知れず、現代を生きる上で欠かせない視点を提供してくれます。
否定的な意見
本書は700ページを超える大著であり、読み通すには相当の時間と忍耐を要する点が、多くの読者にとって大きなハードルとなっています。データの提示や歴史的記述が繰り返されることも多く、もう少し簡潔にまとめられたのではないかという声も少なくありません。また、解決策として提案されている「グローバルな累進資本課税」は、各国の利害が絡む現実の国際政治を考えると実現可能性に疑問が残ります。さらに、分析の対象が主に欧米先進国に偏っており、新興国や途上国のデータが十分に扱われていないこと、資本の定義や測定方法について経済学者から技術的な批判があることも指摘されています。
総評
21世紀の資本は、現代の資本主義が抱える構造的な格差問題を歴史的データに基づいて解き明かした、まさに時代を代表する経済書です。分厚く読み応えがあり、すべての主張に賛同できるかは読者によって分かれるところですが、本書が提起した問題意識は今後数十年にわたって議論され続けるであろう重要なものです。経済の話を超えて、私たちがどのような社会に生きたいのかを考えさせてくれる哲学的な深みも持っています。完読には覚悟が必要ですが、現代社会を理解するための地図として一読の価値は十分にある、知的刺激に満ちた名著だと言えるでしょう。
かのんのひとこと
言い換えると「資本家収益>労働者収益」でありますが、いくら是正したとしても知識と行動力のある人達は資本家側へまわっていくので格差社会は繰り返されるでしょう。本書ではお金持ちの子が相続でお金持ちになるという「世襲による富の固定化」が問題であると主張されています。スタート地点が違いすぎると。その点、今の日本では努力次第でゆっくりでも資本家側へまわっていけるので、大切なのは全体的な金融リテラシーの底上げだと思います。
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